拉致監禁事件の根絶を政府に求む! 全国 拉致 監禁・強制改宗被害者の会

 

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控訴趣意書(1)−訴訟手続きの法令違反/火の粉を払え ルポライター米本和広blog

ストーカー事件の真相(16) 

なぜ、福士裁判官は10回もの公判を入れたのか!? 

 4月19日に、宇佐美隆さんの控訴審が東京高裁で開かれた。 

 控訴審にあたって、私は4月18日付記事「“ストーカー“裁判−オカシナ判決文(上)」で、次のように述べた。 

 今回の控訴審で逆転勝訴を期待する向きがある。しかし、私はそれほど期待してはいない。東京高裁で逆転判決が出る比率が低いからである。確か8%前後だったと記憶する。(略) 
 私の体験は稀有なケースではなく、控訴審が1回で結審する(当然、棄却)のは珍しいことではない。だから、さほどに期待していないのだ。  

 私が予想した通り、控訴審は1回で結審し、5月24日に判決の言い渡しとなった。判決はほぼ100%控訴棄却だろう。東京地裁の福士利博判事と同じように、東京高裁の判事も「統一教会に対するある種のイメージがあったから、1回で結審となった」とは思わない。

 一般論なのだが、そもそも一審の裁判官が審理を尽くして判断したことを、二審でそれを覆すのはよほどのことがない限り、あり得ない話である。しょっちゅう、判決が覆されるようなことがあれば、地裁で敗訴した人すべてが「ダメモト」で控訴するようになる。そうなれば、地方裁判所の権威は失墜し、結果として国民は裁判所を信用しなくなってしまう。 

 よほどのことがない限り? 

 それはどういう場合なのか。 
 1つは、新たな証拠が提出される場合である。 
 しかしながら、わざわざ控訴審に備えて、隠し玉を取っておくなんてことはあり得ないことだ。あたりまえだが、被告人側は無罪を勝ち取るために、出せる限りの証拠を地裁に提出する。新たな証拠など、もうどこを探してもないほどに。 
 もう1つは、地裁の訴訟指揮に瑕疵があったり、事実認定を誤認していた場合である。 

 これから控訴趣意書をアップしていくが、どうして1回で結審してしまうのかみんな首をひねるはず。それは、宇佐美氏の有罪を確信している反統一教会なかんずく監禁派の諸兄姉とて、理性的に知力を使って、丹念に読めば「地裁判決はちょっとオカシイな」と思うはず。 

 どうして、東京高裁の判事は早々と結審してしまったのか。 
 推測するしかないのだが、東京地裁の公判は10回にも及んだ。高裁判事は公判記録を読んで、「地裁判事が十分に審理を尽くした」という心証を抱いたのではなかろうか。 
 だとしたら、それも無理からぬ話である。 

 私は宇佐美さんが起訴されたとき、公判は長くても3回で結審すると予測していた。 
 その根拠を以下に書いておく。 
 まず、ストーカー規制法違反の最高刑は懲役6ヶ月若しくは50万円の罰金という比較的軽微な罪である。何をもって比較的軽微と表現するのか。たとえば、正当な理由なくドライバーを所持していた場合、「指定侵入工具の携帯の禁止」に違反し、懲役1年以下若しくは50万円以下の罰金に処せられる。白タク営業をしていた場合は、懲役3年以下の刑である。こうした刑罰と比較すれば、ストーカー規制法違反は軽微な罪といっていい。 
 それゆえ、公判の回数は少ないだろうと踏んだのである。 

 もう一つは、裁判事案が滞留し、今でもそうだが、審理の迅速化が叫ばれていたからである。それゆえ、懲役6ヶ月以下の事件で、公判がだらだら長引くことはないと予測した。 

 公判1回目は罪状認否・双方の冒頭陳述、2回目は宇佐美さんと告訴人K氏の証人尋問、3回目は検察の論告と弁護人の最終陳述。これで十分である。 

 ところが、あに図らんや、公判は10回に及び、審理は半年以上にも及んだ。 
 起訴=有罪率99%にあって、どうして福士裁判官はわざわざ公判の回数を増やしたのか。 
 私はいいほうに受け取り、判決に期待してしまったのだが、今となっては違う。 
 福士裁判官は端から起訴=有罪で、宇佐美さんを有罪にすると考えていた。 
  しかし、控訴され逆転判決となれば、赤っ恥をかき、出世にも響く。 
 そこで、控訴を見越し、東京高裁の上級判事に「私は、たかだかストーカー規制法違反の事件でも、慎重な訴訟指揮を行いました。審理は十分尽くしましたよ」とアピールするために、公判を10回も入れたのではないかと穿っている。 

 高裁判事は「審理は尽くされた案件」として1回の公判で結審した。その判断がいかに薄っぺらなものだったか。それは控訴趣意書を読めば理解できるはず。24日に予想される「棄却判決文」に控訴趣意書へのコメントがどのようになされているか、宇佐美さんの刑が確定するのは腹立たしいが、ある意味では楽しみでもある。 

*1 控訴趣意書は原文のママだが、適宜、改行、行空けを行い、一部の文字をゴチックにした。 
*2 目次にある頁数を趣意書に生かした。  
*3 告訴人の固有名詞だけはイニシャル(K)とした。 
*4 四角で囲ったところは、管理人の注釈。 一部、敬称を略した。 
*5 下線は、管理人が注目した記述。 

控 訴 趣 意 書

平成24年3月13日 
東京高等裁判所 第2刑事部 御中 

弁護人 堀 川   敦 
弁護人 宮 入 陽 子 

 上記被告人に対するストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という)違反被告事件について,控訴の趣意を述べる。 

 上記被告人に対するストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という)違反被告事件について,控訴の趣意を述べる。


 

目 次 

第1 はじめに……1頁 

1 本件控訴の概要・・・・・・1頁 
2 被告人の主観に関連する背景事情の用語説明……1頁


第2 訴訟手続の法令違反……2頁 

 1 証拠調べ手続きに関する不服(弁護人請求証拠の不採用)……2頁 
 2 訴訟指揮に関する不服(弁護人に対する尋問制限)……3頁 

 3 審理不尽……4頁 

第3 原判決の認定事実の中の事実誤認……5頁

1 原判決「犯行に至る経緯等」の?乃至?の記載中の事実誤認……5頁 
(1) 認定事実?について……6頁 
(2) 認定事実?について……6頁 
(3) 認定事実?について……7頁 
(4) 認定事実?について……7頁 
(5) 認定事実?について……8頁 
(6) 認定事実?について……9頁 
(7) 認定事実?について……9頁 
(8) 判決への影響……10頁 

2 原判決の判示1乃至5の各行為についての犯行状況の記載中の事実誤認……10頁 
(1) 判示1の行為の犯行状況……11頁  
(2) 判示2の行為の犯行状況……12頁 
(3) 判示3の行為の犯行状況……13頁 
(4) 判示4の行為の犯行状況……14頁 
(5) 判示5の行為の犯行状況……14頁 
(6) 判決への影響……15頁 

第4 原審証拠上認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認……15頁 
1 「被告人にはKの本心が分からなかった」と認定すべきこと……15頁 
(1) 被告人の認識(総論)……15頁  
(2) 認定事実??関連……16頁 
(3) 認定事実?関連……17頁 
(4) 認定事実?関連……18頁 
(5) 認定事実??関連……18頁 
(6) 認定事実?関連……20頁 
(7) 認定事実?関連……21頁 
(8) 認定事実?関連……21頁 

2 判示各行為は恋愛感情充足目的の「待ち伏せ」にあたらないこと……22頁 
(1) 総論……22頁 
(2) 判示1の行為時の認識……23頁 
(3) 判示2の行為時の認識……25頁 
(4) 判示3の行為時の認識……26頁 
(5) 判示4の行為時の認識……28頁 
(6) 判示5前段の行為時の認識……31頁 
(7) 判示5後段の行為時の認識……33頁 
(8) 認識の認定に関する原判決の誤り……35頁 
(9) 方法について……36頁 

第5 法令適用の誤り……36頁 
1 恋愛感情充足目的の解釈……36頁 
2 「待ち伏せ」の解釈……37頁 
3 「不安を覚えさせる方法」の認識……38頁 
4 ストーカー規制法を適用すべき事案ではないこと……39頁 

第6 量刑不当……40頁 
1 動機の点……40頁 
2 手段方法と結果の点……41頁 

ゴチック部分が今回アップしたところ


第1 はじめに 
  
1 本件控訴の概要 

 本件は,ストーカー規制法における「恋愛感情を充足させる目的」(以下「恋愛感情充足目的」という。)が被告人にあったか否かという被告人の主観が主な争点となった事件であるところ,原審においては,後記第2記載のとおり,被告人に恋愛感情充足目的はなかったことを裏付ける証拠として,被告人の主観形成の立証に重大な関連性がある弁護人請求証拠の採用が一切認められず,また,被告人の主観に関連する前提事実についての弁護人の尋問がことごとく制限されるなど,甚だしい審理不尽による訴訟手続の法令違反があったと言わざるを得ない。 

 また,原判決には,後記第3及び第4記載のとおり,被害者K■■(以下「K」という。)を始めとする検察側証人らの供述の不自然性,信用性に欠ける事情,事実経過の不自然性等,弁護人が指摘する問題点や恋愛感情充足目的はなかったとの弁護人の主張について全く検討されることなく,一方的に検察側証人の供述に沿った事実認定がされたことによる重大な事実誤認がある。 

 さらに,原判決には,後記第5記載のとおり,ストーカー規制法の解釈適用を誤るという法令適用の誤りが存在する。 

  
2 被告人の主観に関連する背景事情の用語説明 

 被告人の主観に関連し,被告人が用いる言葉について,若干説明をしておく。 

 原審で認定されたとおり,平成19年当時,被告人とKはいずれも,世界基督教統一神霊協会(以下「統一教会」という)の信者であり,教祖から結婚相手として指名されて合同結婚式に参加し,結婚を前提とする交際をしていたことに争いはない。 

 ところで,統一教会信者に対しては,両親らがその信仰や結婚に反対して,脱会支援者の協力を得て,信仰や結婚について再考を促す活動が少なからずなされている。 
 即ち,統一教会信者を改宗又は棄教させる専門家とも言うべき「脱会支援者」のアドバイスにより,両親らがマンション等の一室に同教会信者を長期間留めて外部から「保護」して「隔離」し,統一教会を脱会するよう「説得」する活動である。 

 このような「保護」や「説得」の過程において,同信者本人の意に反する局面があることから,統一教会においては,前記「脱会支援者」のことを「職業的強制改宗屋」と呼び,外部からの前記「保護」「隔離」を「拉致」「監禁」,脱会の「説得」を「強制棄教」ないし「強制改宗」と表現している。

「拉致」「監禁」を統一教会や教会員が使用する用語としたのは疑問である。なぜなら、アメリカの国務省の報告書や、「国境なき人権」の調査報告書でも使用されているからだ。なお、英語表記はディプログラミング。 
 また、私も商業雑誌や単行本で、「拉致」「監禁」用語をとくに断りを入れずに使用しているが、出版社(宝島社、講談社、情報センター出版局、学研)の編集者が表現を変えるように指示されたことはない。なぜなら、この2つの用語は日本語辞典にあるように、一般用語に過ぎないからである。 
 付言しておけば、反統一かつ監禁諸派がこの用語を批判したことはない。彼らが主張しているのは「拉致、監禁が行われた事実はない」というだけである。

 また,信者によっては,自己の信仰を守りつつ,隔離された状況から解放されるために,やむをえず脱会した如く装う例があり,統一教会では,これを「偽装脱会」と表現している。 

 以上のとおり,一つの事実であっても,立場の違いにより,それを表現する<1頁> 
言葉に違いがあるところ,被告人は,統一教会側の立場で,原審において「拉致監禁」や「強制改宗」,「偽装脱会」などの言葉を用いていることから,本書面においても,被告人の主観的な認識や目的を述べるにあたり,被告人の用いる言葉で表現することとする。 


第2 訴訟手続の法令違反 
  
  原判決には,以下に述べるとおり,訴訟手続の法令違反があり,同違反が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,その破棄を求める。 

 1 証拠調べ手続きに関する不服 

 (1) 原審は,弁24乃至30,32乃至35,37号証の各弁護人請求証拠についていずれも「関連性なし」として,証拠調べ請求を却下した(原審記録141〜145丁)。しかし,これらの証拠はいずれも,以下のとおり,第6回公判被告人質問において,関連性の立証がされたものである。 
  (ア) 弁24乃至25号証(広報東京都,広報すぎなみ) 
第6回被告人調書p34において,関連性は立証されている。 

  (イ) 弁26乃至30号証(月刊誌「財界にっぽん」各誌) 
第6回公判被告人調書p52〜53において,被告人に対する提示はないが,関連性は立証されている。 

  (ウ) 弁32号証(雑誌「月刊現代」2004年11月号) 
第6回公判被告人調書p19において関連性は立証されている。 

  (エ) 弁33号証(単行本「我らの不快な隣人」) 
第6回公判被告人調書p20〜21において関連性は立証されている。 

  (オ) 弁34号証(単行本「人さらいからの脱出」) 
第6回公判被告人調書p27において関連性は立証されている。 

  (カ) 弁35号証(医学専門雑誌「臨場精神医学」の抜粋) 
第6回公判被告人調書p19において関連性は立証されている。 

  (キ) 弁37号証(冊子「拉致監禁」NO.3) 
第6回公判被告人調書p52〜53において,被告人に対する提示はないが,関連性は立証されている。 

 (2) 原審の証拠却下決定の違法性(合理的裁量の逸脱) 

 原審において,被告人は,Kを捜していたときの自らの認識について,後記第4.1(1)のとおりの主張をしていたところ,上記(1)(ア)ないし(キ)の各証拠はいずれも,被告人がKを捜索する過程で読んだ資料であり,Kの置かれた状況(「強制改宗屋らによる拉致監禁状況」)を推測し,Kの意思(統一教会の信仰及び被告人に対する結婚意思の有無)を確認するにはK本人と直接会って話をしなければならないと考えるに至った根拠となる資料であった(原審記録144〜145丁証拠等関係カード記載の立証趣旨参照)。<2頁> 

 したがって,前記各証拠は,被告人において,ストーカー規制法における恋愛感情充足目的があったか否かを判断する重要な証拠であったと言える。 
 にもかかわらず,原審は前記各証拠の取調べ請求をすべて却下したのであり,これは明らかに,合理的裁量の範囲を逸脱した違法な判断である。 
   
(3) 原判決への影響  

  もし仮に,前記各証拠の取調べ請求が認められて公判廷に顕出されていたならば,原判決が認定した「被告人は,Kには被告人に対する恋愛感情がなく,被告人と結婚する意思も全くないことを知りながらも」という事実認定(原判決書p15)には至らなかったはずである。 

 すなわち,前記各証拠をふまえて,本件事実経過を併せ見れば,被告人は,Kが,Kの両親の依頼した強制改宗屋らによって意に反して拉致監禁され,当該監禁から逃れるために偽装脱会を考え,統一教会本部に対する脱会届を送付したり,被告人の実家に荷物や手紙を送ったりした可能性があると認識し,公訴事実の当時,Kの婚約破棄が本心であると認識し得なかった事実を認定することができたのであり,少なくとも,Kの婚約破棄が本心であることを信じられなかったことにつき合理的理由があったと認定することができたはずであるから,原判決のように,被告人がKの婚約破棄を本心と「知りながら」,判示各行為を行ったとの認定には至らなかったはずであり,原判決への影響は明らかである。     

 2 訴訟指揮に関する不服 

(1) 原審は,証人宮村峻(以下「宮村」という)に対する弁護人による下記の尋問について,主尋問と関連性がないという検察官の異議を認め,または,職権により制限した。すなわち, 

 (ア) 第4回公判宮村証人尋問調書(以下「宮村調書」という)p16の「これまで,何人くらいの信者に対する脱会支援を行ったんですか。」という尋問。 

 (イ) 同p17の「統一教会元信者の父母達を集めた団体を主宰してますよね。」という尋問。 

 (ウ) 同p24の「証人は後藤徹という統一教会信者を知っていますか。」という尋問。なお,同尋問は,脱会支援に関する尋問であり,後藤徹という人物は,前記弁33号証,弁37号証記載のとおり,荻窪のフラワーマンション(同マンションは,K自ら第3回公判で「一時居た」と供述している。)に長期間にわたり隔離され,宮村から強力に脱会説得を受けた人物である。 

 (エ) 同調書p31の「御両親からは,何を頼まれたんですか。」という尋問。 

 (オ) 同調書p32の「信者の中で本心で脱会する意思がないのに脱会届を書く信者というのはいましたか。」という尋問。 

 (カ) 同頁「偽装脱会という言葉は知っていますか」という尋問。 

(2) 尋問制限の違法性<3頁> 

ア 上記(1)の尋問は,後記イのとおり,宮村供述の偏波性に関わり,宮村の主尋問における供述のうち,下記(キ)ないし(ケ)の供述の証明力を争うために必要な尋問であるから,反対尋問をする権利がある(刑訴規199?)。

刑事訴訟法規則199条の1:?証拠調については、まず、検察官を取調を請求した証拠で事件の審判に必要と認めるすべてのものを取り調べ、これが終わった後、被告人又は弁護人が取調を請求した証拠で事件の審判に必要と認めるものを取り調べるものとする。但し、相当と認めるときは、随時必要とする証拠を取り調べることができる。 
?前項の証拠調が終った後においても、必要があるときは、更に証拠を取り調べることを妨げない。

 (キ) 同調書p4の「僕がKさんを管理して思うままに操っているわけではない。」という供述。 

 (ク) 同調書p5の「(Kは)会いたくないし,顔も見たくないと言ってました。」「彼女が会いたくないと言っているということ,それから,預かっている携帯電話とか,・・・本を返したいと言ってるよ。」という供述。 

 (ケ) 同調書p7の「(Kの婚約破棄が真意か確認したいということは)聞いていません。」「(Kの脱会届が真意であるか確認したいということは)聞いておりません。」という供述。 

イ すなわち,上記(1)(ア)ないし(ウ)の尋問は,宮村証人がどういう立場の者であるかという宮村供述の偏波性に関わる属性を明らかにする趣旨の尋問として,同人のこれまでの脱会支援の実績や活動状況等を訊く尋問であった。 

 また,上記(エ)の尋問は,そもそも宮村は,Kが脱会に至る経緯の発端から関わっており,被告人としては,かかる人物によってKの意思を仲介されても,到底信じられるはずがないことを示す趣旨の尋問であり,被告人の主観に関わる重要な尋問であった。

 告訴人のKが実家に戻ったのは2008年1月1日のこと。その日のうちに家族全員で別の場所に移り、そこにその日のうちに宮村がやってきた。これはKが証人尋問で語ったことである。福士裁判官は当然、このことに注目すべきだった。それなのに、Kへの証人尋問で、拉致監禁とか偽装脱会とかの話題になると「本件とは関係ない」と、弁護人の尋問をことごとく遮った。 

 裁判官の訴訟指揮が偏頗的であることがはっきりすると、検察も気を良くしたのか、「本件とは関係ない」と弁護人の尋問に異議を申し立てるようになり、あろうことか宮村まで図に乗り、自分の尋問のときには証言台で足を組み、弁護人のほうに半身になって身を乗り出すように身体を向け、挑発的に「答える必要があるのか。関係ないことだ」という始末。 
 福士裁判官菱沼検事そして宮村証人がたびたび「関係ない」を連発するので、弁護人が戸惑ったのは当然のことだった。見ていて気の毒だった。 

 拉致監禁監禁下での説得偽装脱会は「本件と関係ない」ことなのか。 

 それは趣意書にある通り、宇佐美氏の「主観に関わる重要な尋問」だったはず。 
 裁判官は、価値中立的に、Kへの拉致監禁の有無と宇佐美氏の行為との関連性に留意すべきだった。関連性を検証し、その結論として「本件とは関係ない」というのであれば、宇佐美氏と弁護人にとっては不満であっても、公平公正な訴訟指揮ということができる。そうでないから、裁判官にとって屈辱的な「偏頗(へんぱ)的」という評価を下さざるを得ないのである。 

 わかりやすい例で言えば、しばしば盗みの罪で刑を受けていたAが新たにBの財布からお金を盗んだ。Aの新たな盗みについて確たる証拠はない。Aも否定している。こうした場合、公判では過去の盗みのことが言及される。当然のことであろう。それなのに、裁判官が「本件とは関係ない」と言えば、Bばかりでなく傍聴者とて「そんなバカな」と憤る。あたりまえすぎる話である。 

 これと同じことを福士裁判官はやってのけたのである。弁護人が請求した証拠で拙著『我らの不快な隣人』や小出氏の『人さらいからの脱出』には、宮村が拉致監禁、監禁下での説得に関わっていたことが明記されている。また後者の証拠では、宮村の強制説得に対し、偽装脱会によって監禁から逃れたという体験が綴られている。これらの請求証拠は却下するのは、泥棒の過去の盗みの手口を「本件と関係ない」というのとまるで同じなのだ。

 また,上記(オ)及び(カ)の尋問は,被告人がKの脱会が偽装であると疑ったことにつき合理的理由があることを示す趣旨で,多数の脱会支援に関わってきたことを自認する宮村(同調書p32)に対し,偽装脱会に関する尋問をしたものである。 

(3) 原判決への影響 

 宮村の主尋問における前記供述の信用性を弾劾できれば,原判決6頁の?の宮村が被告人にKの意思を伝えたとの事実認定がされなかったか,少なくとも,宮村が伝えたとしても,被告人がそれを信じないことにつき合理的理由があったと認定されたはずであって,少なくとも,Kの婚約破棄が本心であると被告人が「知りながら」とは認定できず,恋愛感情充足目的の認定根拠にならなかったはずであるから,原判決への影響は明らかである。 

  
 3 審理不尽 

(1) 審理不尽の違法性 
  前記のとおり,原審は,ストーカー行為の成立要件である恋愛感情充足目的を判断するにあたり,被告人のKに対する思いや認識等の主観に大きな影響を与えた資料等の証拠について,弁護人の取調べ請求を却下し,また,Kの統一教会脱会を支援した宮村に対する尋問においても,Kとの関係性や宮村自身の利害関係や属性等,宮村供述の信用性を判断する上で重要な事項について<4頁> 
反対尋問を制限し,被告人のKに対する主観的認識に関し,十分な審理を尽くさなかった。 

 また,被告人が認識していたKに対する強制改宗目的による拉致監禁及び偽装脱会の可能性については,原審公判廷において,弁護側証人である中務伸人(以下「中務」という)及び山川都大(以下「山川」という)も,同様の供述をしており(第5回公判中務証人尋問調書p2〜21,同山川証人尋問調書p2,7。以下,前記調書をそれぞれ中務調書,山川調書という),これに関する被告人の公判廷供述を裏付けていたにもかかわらず,裁判所は,前記供述を聞いた後に行われた弁護人の前記各証拠の取調べ請求を,「関連性なし」として却下したのである。 

(2) 原判決への影響 
 被告人は,原審公判廷において,Kの居場所を探した目的は,Kが被告人に対する恋愛感情及び結婚意思を有しているかどうかを確認するためである旨,再三供述していたが,裁判所は,当該供述を採用することなく,被告人は当初からKの恋愛感情及び結婚意思の不存在を知りつつKの居場所を探し,自らの恋愛感情充足のために判示各行為を行ったものと認定した。 

 しかるに,もし仮に,弁護人の請求した前記各証拠及び宮村に対する前記反対尋問が行われ,被告人の前記供述を裏付ける証拠が公判廷に顕れていたならば,被告人は,Kの恋愛感情及び結婚意思の存否が分からないため,それを確認すべく判示各行為を行ったと認定される蓋然性が高かったのであるから,原判決への影響は明らかである。 
 
−続く− 
 
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