統一教会の信者に対する、拉致監禁・強制改宗について、その根絶を求めます。冊子「拉致監禁」シリーズ2 - その時警察はどう動いたか。拉致監禁事件に終止符を打つため、両親・牧師を告訴 今利智也・理絵夫妻
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冊子「拉致監禁」シリーズ 2 その時警察はどう動いたか

2 拉致監禁事件に終止符を打つため、両親・牧師を告訴

今利智也・理絵夫妻

「両親を訴えることに躊躇いがなかったと言えばウソになります。

でも、自分と家族の身を守り、信仰を守り、統一教会の会員を襲う拉致監禁問題に終止符を打つため、さらには日本に真の信教の自由を打ち立てるためにも、この方法しかなかったと思います。?肉を切らせて骨を断つ?というような信念でした」

今利智也さん、理絵さん夫妻は、神奈川県内の自宅で両親などを訴えた心境をこう語った。

理絵さんはこれまでに二度、家族と牧師の手によって拉致監禁された経験を持つ。1995年10月下旬の時は、監禁から数日後、マンションのベランダから飛び降り、奇跡的に逃げることができた。理絵さんは脱出後、智也さんと入籍。両親や親族には夫の住所と自分の携帯電話の番号だけを教えて、居場所を突き止められないように警戒していた。

だが、最初の拉致と同時に、理絵さんが教会に導いた妹も拉致監禁され、妹は離教。そのことは全く、理絵さんの耳に入らない状態にして、この妹の誕生日を祝う機会を狙い、二度目の拉致監禁が実行されたのである。

97年1月10日午後10時半頃。川崎市内のファミリーレストランで今利理絵さんは、妹の誕生日祝いを終えて、駐車場に出たところ、暗闇から数人の大人に襲われ、両腕両足を羽交い締めにされ、体を宙に持ち上げられた。そのまま前方に待機しているワンボックスカーの中に。車を暖めるため一足先に店を出て車のエンジンをかけた時に悲鳴を聞き、その方向に目を向けた智也さんには、暴漢に襲われ連れ去られようとしている妻の姿が飛び込んだ。即座に、妻のそばに駆け寄ろうとしたが、両サイドから二人の男に力ずくで押し倒された。彼の両膝が激しくアスファルトの地面でこすりつけられ、出血。左手も地面に打ちつけられて、血がにじんだ。

その時、今利さん夫妻はともに「お兄さん、ごめんなさい」という妹の泣き声を聞き、妹が監禁を手引きしたことに初めて気づいたのである。理絵さんを乗せた車が走り去った後も、智也さんを妨害した2人の男は立ち去らない。彼が後を追跡できないよう見張るためだ。すぐに智也さんは、店員に頼み、警察を呼んでもらう。駆けつけた警察官は事情を聞いたが、こう告げた。「もしこの事件が見知らぬ人が連れ去ったということであれば緊急配備しなければならないが、ご両親が一緒ならば、奥さんの件に対しては何もできない。ただ、あなたは怪我をしているので、傷害事件として取り上げることはできる」

警察は傷害事件の捜査のため、妻の実家に行ったり、聞き込みをしたり、戸塚教会に出向くなどしたが結局、妻の行方に関する手がかりはつかめなかった。次第に焦りの色を出す警察をあざ笑うかのように、理絵さんは監禁場所を三度も変えられ、警察の捜査も行きづまった。

この拉致監禁は横浜の日本基督教団戸塚教会の黒鳥栄副牧師、群馬の日本基督教団太田八幡教会の清水与志雄牧師(当時)が深く関与していた。理絵さんは関東圏内の三か所のマンションを転々と移動させられたが、マンションのドアには、元々付けられていた錠や防犯チェーンのほかに、中からは開けられないように二個の南京錠とチェーンが付けられていた。窓には半透明のビニールが張られ、鍵がないと内側からは開けられないクレセント錠で施錠され、ふすまやトイレの錠は取り外されていた。

プライバシーを侵され、統一教会に対するありとあらゆる誹謗中傷、理絵さんへの罵倒と侮蔑、脅迫と恐怖にさらされて、監禁前は53キロあった理絵さんの体重は瞬く間に43キロに減少。このまま、抵抗しても精神的肉体的に耐えることが難しいと判断した理絵さんは真意を隠して、「私が間違っていました」と語った。それから約2週間後、理絵さんは解放されたのである??。

偽装脱会をする中で分かってきたことがあった。子供を拉致する家族の集いがあり、事前に拉致の場面を想定して、各自の役割を明確にして何度も拉致のリハーサルを行うこと。理絵さんの父親は、拉致実行の前に地元警察に事情を話しており、警察からは「穏便にお願いします」と言われていたこと。たとえ、統一教会の信仰を捨てたとしても、今度は逆に統一教会に反対する活動を強いられること。

約5か月に及ぶ監禁で、理絵さんは心身ともに激しく衰弱し、働くどころか普通に生活することさえ困難だった。寝ても、夢に親たちが現れて追いかけてくる悪夢に何度もうなされた。外出中でも、理絵さんのそばで誰かが突然走り出すと、自分を拉致するために襲ってきたのではないかという恐怖にかられる。通院しながら体調の回復に専念した。

智也さんから「夢の中で逃げないで、両親と闘いなさい」と励まされ、次第に理絵さんは落ち着きを取り戻す。そして、自分と家族の身を守るために暴行、脅迫、拉致、監禁を理由に、両親や牧師らを民事刑事の両方で訴えたのである。刑事の方は02年3月、嫌疑不十分で不起訴に。民事裁判の方は、今利さん側が地裁、高裁いずれも敗訴という結果に終わっている。つまり、理絵さんの両親や牧師が行った行為は、「原告の意思に反する、違法な、拉致、監禁及び統一協会からの脱会の強要とまでは認めることができない」(横浜地裁判決文)というのである。実は、地裁においては裁判官と裁判長が途中で人事となり、判決日も二回延期されるなど、不可解な動きがあった。今利さん側の担当弁護士は、「ほかの宗教団体ならば、完全に勝利している内容なのに…」と悔しがったという。

高裁はあっけない敗訴だった。今利夫妻にとって、その判決文はあまりにも粗末なものに思えた。上告理由書にそのことを指摘し、最高裁に上告した。

最高裁は上告に対して1年間、沈黙した。そして、最高裁が選択した結論は、異例の「和解勧告」であった。原告側の弁護士によれば、最高裁での「和解」は極めて稀有な事態であり、自分の弁護士人生において、最高裁で和解となったのは、他に一例しか知らないと言ったとのことであった。

06年3月、今利夫妻は、最高裁で親族等と和解した。和解項目の第一項に、「当事者双方は相手方の信教の自由や価値観を尊重し、これに干渉しない」と記されていた。今利さん側の主張を受け入れた和解項目である。

夫の智也さんは、裁判を振り返って次のように話した。

「裁判はケンカでも報復でもありません。親子関係に致命的な亀裂が生じることはありません。問答無用の暴力行為に訴える相手のやり方ではなく、これは合法的な話し合いの場なのです。彼らはメディアをうまく利用し、?虚構の世論?を形成し、その中で統一教会のイメージはモンスター状態になっています。その意味では、統一教会側が?虚構の世論?をひとつひとつ論破していただきたい」

「反対派は、『信者は教団によってマインドコントロールされていて、自分の頭で考えることができない思考停止状態におかれている』などと吹聴し、拉致監禁の正当性を主張しますが、事実は違います。逆に、暴力を用いた拉致監禁・強制棄教を受けることによって人格が破壊され、家庭に深刻な亀裂が入る痛ましいケースをよく聞きます。『親心』と偽って、一個人のみならず家庭を奈落の底に突き落とすようなことは、決して許されることではありません」

また、理絵さんは偽装脱会中、自分が直接目撃した牧師についてこう語った。

「牧師が家族を遠隔操作しているんです。同じマンションの同じ部屋を、今度は別の家族が使用するというように、繰り返し使っていましたよ。だれを出してだれを入れるかの指示を牧師が出していました。私が偽装脱会をしていたとき、牧師の指示で、脱会説得に連れていかれましたが、あんまり鍵が多くて、マンションのオートロックを解除する鍵を、鍵束から探し出せずにいました」

「牧師は、監禁された人が確実に脱会するように、その人の状態を家族に報告させて、その状態に合った効果的な方法を家族にやらせるんです。私の場合も、まずは家族から『理絵ちゃんのことが知りたいから、話してほしい』とか、『統一原理のことを説明してほしい』とか、しつこく言われました。それは単に、本人の心を開かせるための手段ですが、『もしかしたら、家族は本当にそう思っているのかもしれない』という気持ちにもなりました。

そうやって話をさせておいて、次に出てきたのが、日本基督教団が出している冊子でした。それもまずは『お父さんとお母さんに説明してほしい』と言われ、説明を終えると今度は『牧師先生に説明してほしい』と言われました。家族は牧師が早く来て、私が脱会するように説得してほしいんですけど、本音は言えない。それで遠回しに『冊子の内容について牧師先生に説明してほしい』と言ってくるんです。話は堂々巡りになりました」

「私は外に出ることも連絡を取ることもできない。一体、これが法治国家なのかと、監禁中、何とも言えない深い虚無感に襲われました。警察に、もっときちんと対応してほしいです。本人が助けてほしいと訴えても、『親子の話し合い』だと言われて素通りするようでは…。警察としての威信をかけて対処してもらいたいです」

妻と家族を守り、冷静に語っていた智也さんだったが、全情熱を傾けた裁判で勝訴を勝ち取れなかったこと、さらに95年の第一回目の拉致監禁からの長期の戦いが精神的に深刻なダメージを与え、現在、彼は深刻な鬱病で働くことができず、市役所のケースワーカーの薦めで生活保護を受けている。

妻の理絵さんによれば、智也さんは05年7月に発症し、休職せざるをえなかった。

「親族および反対派と真っ向から対峙し、激戦を交わしたのは地裁でした。相手方からの虚偽の主張や、事件と無関係な書類に目を通しながら、主人は怒ったり落胆したりしていました。山口弁護士、紀藤弁護士らの反対尋問も厳しく、また裁判が長期に及んだ上に、裁判官の交代、二度の判決言渡日の延期もあり、敗訴判決でしたから……。監禁から地裁判決まで、本当に走り続けた状態でした」

智也さんは現在は精神障害2級の障害者という。障害年金を受けているが、不足分を生活保護費でまかなっている。

拉致監禁の被害は、今なお今利家を襲っていると言わざるを得ない。


2 その時警察はどう動いたか
  1. まえがき
  2. 拉致監禁事件に終止符を打つため、両親・牧師を告訴 今利智也・理絵夫妻
  3. 三度の拉致体験 監禁行為に荷担した警察官 小林宗一郎
  4. 人権を無視した拉致監禁 許せない 静岡在住 M・S
  5. 監禁を二度も黙認した警察 宮腰美千代
  6. 桧田仁議員「警察は見て見ぬふり」
    田中警察庁長官「親族間でも厳正に対処」
    平成12年4月20日 衆院決算行政監視委員会での質疑応答要旨
  • 我らの不快な隣人

    ルポライター米本和広氏が、拉致監禁によって引き起こされたPTSD被害の実態をレポート。

    ►第6章 掲載
  • 人さらいからの脱出

    世にも恐ろしい「人さらい事件」に関わった弁護士、牧師、マスコミ人らの非道な実態を実名で白日のもとにさらす。

    ►書籍紹介
  • 日本収容所列島

    いまなお続く統一教会信者への拉致監禁。小冊子やパンフレット、HP等で告知してきた内容をまとめました。

    ►書籍紹介

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