信者が拉致・監禁され、ディプログラマーから暴力的な強制棄教を迫られる胸痛む人権侵害

拉致監禁・強制棄教とは

拉致監禁・強制棄教とは

拉致監禁・強制棄教とは、本人の意思に反してマンションなどに隔離・拘束し、外部との連絡や自由な移動を制限した状態で、信仰をやめるように圧力をかける行為をいいます。信者の家族が心配や不安から脱会説得する場合であっても、本人が自由に外出できない、第三者に連絡できない、逃げられない状況に置かれるなら、それは通常の話し合いや説得ではありません。本人の意思に反して自由を奪う監禁状態であり、違法行為として重大な責任を問われ得るものです。

一部の新宗教の信者に対するこうした人権侵害は、1960年代から約60年間にわたって繰り返されてきました。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の集計によれば、拉致監禁・強制棄教の被害者は4300人以上に及ぶとされています。拉致監禁の手法としては、実家への帰省時などに複数人で取り囲み、ワゴン車に無理やり乗せ、あらかじめ準備されたマンション等へ連行するパターンが多く報告されています。連行先では、玄関に南京錠やチェーン錠がかけられ、窓の開閉も制限されるなど、物理的に脱出できない状態に置かれた事例が多数あります。

 

家族だけではなかった脱会説得の構造

拉致監禁の多くは、信者の家族や親族によって実行されてきました。しかし、多くの事例では、家族・親族だけでなく、脱会説得に関わる外部関係者の助言・関与が指摘されています。脱会カウンセラーや救出カウンセラーと呼ばれる「脱会説得の専門家」が、信者家族に隔離・拘束を伴う脱会説得の進め方を助言・指導し、監禁状態での棄教説得に関与してきた実態があります。

信者が家族や親族によってマンションなどに監禁されると、その後「教理に詳しい先生」などと紹介され、脱会カウンセラーがマンションなどを訪問し、脱会説得を行ってきました。こうした脱会カウンセラーには、キリスト教、とくにプロテスタント系・福音派系の牧師や関係者が多く、信仰をやめさせるため、説得の際には元信者たちが説得に同席させることも多くありました。

 

監禁と強制棄教がもたらす心身への深刻な影響

閉じ込められた信者は孤独な闘いを強いられます。移動の自由、外部と連絡する自由、第三者に相談する自由、信仰を自ら選び続ける自由は奪われ、外部にアクセスして情報を取得することもできません。隔離された空間には脱会説得に用いられる書籍、資料、情報などが持ち込まれます。多くの場合、脱会を表明するまで監禁状態が解かれません。隔離され、閉ざされた空間で、何か月、時には何年も脱会説得が続きます。熱心に信仰してきた信者であればあるほど、その精神的苦痛は極めて大きく、解放後も長く影響が残ることがあります。

被害の影響は、監禁期間の苦痛にとどまりません。解放後もPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、不眠、悪夢、過覚醒、抑鬱、対人恐怖に長期間苦しむ被害者がいます。ルポライター・米本和広氏の『我らの不快な隣人』や著述家・加藤文宏氏の『檻の中の闇』に拉致監禁被害者のPTSDの具体例が詳しく報告されています。心身の後遺症に加え、家族関係が修復不能なまでに破壊されたケースも少なくありません。

 

裁判所が違法性を認定

一部の事例では裁判所でも違法性が認定されています。旧統一教会信者の後藤徹氏の事件では、12年5か月にわたり都内のマンションなどに監禁され、解放後に栄養失調等と診断され緊急入院しました。この事案では、民事裁判において、長期にわたる監禁と棄教強要の事実を認定し、東京高裁を経て最高裁(平成27年9月29日)で判決が確定しました。

また、エホバの証人の女性信者が、夫と牧師の関与により事前に改造された山荘に監禁され棄教を迫られた事件では、大阪高裁(平成14年8月7日)が身体および精神の自由を侵害する不法行為であると認定し、判決が確定しています。旧統一教会の鳥取教会を約20人の集団が襲撃し、当時31歳の女性信者が拉致されて1年3か月間にわたり監禁、棄教強要された事件では、広島高裁松江支部での判決(平成14年2月22日)で被害者に対する逮捕・監禁、および棄教強要の違法性を認定しました。その他、大阪高裁(平成16年7月22日)や広島高裁(令和2年11月27日)などにおいて、拉致監禁と棄教強要を違法と認定した判決があります。これら5つの判決では、いずれも脱会説得に関与したキリスト教牧師の不法行為が認定されています。

 

国際社会からの警告

これまで国際社会においても日本の拉致監禁・強制棄教の問題は批判を受けてきました。国連の自由権規約委員会は2014年、日本における新宗教信者に対する拉致・強制監禁について懸念を表明し、日本政府に有効な措置を講ずるよう勧告しました。国際人権NGO「国境なき人権」(Human Rights Without Frontiers)も、2011年に独立した調査に基づき、日本での拉致監禁・強制棄教の実態を報告しています。米国務省の『国際宗教の自由報告書』でも、旧統一教会信者に対する拉致監禁・強制棄教問題は複数年にわたり取り上げられ、信仰の自由が脅かされていることに警鐘を鳴らしています。