信者が拉致・監禁され、ディプログラマーから暴力的な強制棄教を迫られる胸痛む人権侵害

拉致監禁・強制棄教とは

① はじめに

就職したばかりの青年が久しぶりに帰省したところ、そのまま家族に囲まれ、外部と連絡できない環境に置かれました。その後、職場にも姿を見せない日々が続きました。

また、家庭を持つ女性が実家で両親や兄弟に会えると信じて帰省したところ、その後連絡がとれなくなり、残してきた夫や子ども、友人が行方を捜す事態となりました。

なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。

そこには、本人がある宗教を信仰していたという事情がありました。

日本では長年にわたり、一部の新宗教の信者に対して、本人の意思に反する隔離や拘束が行われ、信仰をやめるよう迫られたという訴えが数多くあります。
当会では現在、数千件に及ぶ被害記録や名簿、数百件の証言資料について、内容の確認と整理を進めています。
内容はさまざまですが、多くの証言に共通しているのは、本人の自由な意思による選択が妨げられたという点です。

こうした出来事は「拉致監禁・強制棄教」と呼ばれてきました。

なお、「強制棄教(きょうせいききょう)」とは、本人の意思に反して信仰を捨てるよう強いることをいいます。
このページでは、その経緯や実態について、現在確認されている資料や証言をもとに紹介します。

② どのように行われたのか

拉致監禁・強制棄教と呼ばれる事例は、時代によって形を変えながら、半世紀以上にわたって報告されてきました。

初期の事例でも、家族だけでなく宗教関係者などが関与し、精神病院への収容や、自宅・親族宅での隔離など、本人を外部から切り離す方法が用いられたとする報告があります。
1980年代以降には、第三者が家族に対して脱会説得の方法を助言・指導し、隔離や説得の進め方に関与したとされる事例が、資料や証言の中でより明確に確認されるようになりました。

さらに、マンションやアパートなどを転々と利用しながら長期間にわたる隔離事例も数多く報告されています。

被害者の証言には、外出を制限され、電話や手紙など外部との連絡を遮断され、監視下での生活が続いたとするものもあります。
隔離先では、玄関の施錠や窓の開閉の制限などにより、物理的に脱出できない状態に置かれたとする証言もあります。
これらの事例の中には、キリスト教関係者が脱会説得や助言に関与したとされるケースも数多く報告されています。

方法や時代背景は異なりますが、多くの事例に共通するのは、<本人の意思に反して自由が制限され、その状態の中で信仰をやめるよう迫られたという点です。
その実態は、裁判資料や被害者の証言、国内外の人権団体の報告や研究者の調査によって、少しずつ明らかになってきました。

③ なぜこのようなことが起きたのか

拉致監禁・強制棄教が行われた背景には、さまざまな要因があったと考えられています。

信者となった家族を心配し、何とか元の生活に戻ってほしいと願う思いも、その一つでした。とくに結婚、献金、信仰活動などをめぐる不安や、マスメディアによる報道の影響などを背景に、家族の心配や葛藤が強まり、対立が深まるケースもありました。

また、一部の宗教関係者は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)をはじめとする新宗教を強く批判し、その信仰から離脱させる活動を行っていました。こうした活動には、キリスト教関係者や元信者などが関与した事例も多く報告されています。

このような脱会活動が本人の自由な意思を十分に尊重しない形で行われたと指摘する声もあります。一方で、家族や関係者の側には「本人を救うためだった」と語る人もいます。

しかし、その目的が何であれ、本人の意思に反して身体の自由を奪い、隔離や拘束のもとで信仰の変更を求めることは、人権や信教の自由との関係から大きな問題として問われてきました。
この問題は深刻な人権侵害であるにもかかわらず、メディアで大きく取り上げられる機会は限られてきました。そのため、今なお多くの人が、その実態を十分に知らないままです。

④ 監禁と強制棄教がもたらす影響

隔離された人々は、外出や電話・手紙などを制限され、家族や友人をはじめ、外部との連絡を絶たれた状態で生活することを余儀なくされました。

また、隔離された場所では信仰をやめるよう説得が繰り返され、脱会を表明するまで自由な生活に戻れなかったとする証言も数多く残されています。

こうした状況は、本人に大きな精神的苦痛を与え、その後の生活にも深い影響を及ぼしました。解放後も不眠、悪夢、不安、対人関係の困難などに長く苦しんだと語る被害者もおり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した例も複数報告されています。
また、家族との関係が深く傷つき、その後も修復が困難になったケースも少なくありません。

⑤ 裁判で違法性が認定された事例

拉致監禁・強制棄教をめぐっては、これまで複数の民事裁判が行われてきました。
その中では、本人の意思に反する長期間の隔離や拘束、ならびに信仰をやめるよう強要する行為について、裁判所が違法な行為であると認定した事例があります。

判決では、家族だけでなく、脱会説得に関与した宗教関係者の責任が認定されたケースもあります。

主な判決事例として、後藤徹氏事件、エホバの証人女性信者事件、鳥取教会信者監禁事件などがあり、東京高裁、大阪高裁、広島高裁などで違法性が認定され、一部は最高裁で確定しています。

これらの裁判例は、本人の意思に反する隔離や拘束、信仰をやめるよう迫る行為が、人権や信教の自由に関わる重大な問題であることを示しています。

隔離・拘束等の違法性が認定された主な判決事例

(1)後藤徹氏12年5か月監禁事件(最高裁確定)

旧統一教会信者の後藤徹氏(当時31歳)が、12年5か月にわたり都内のマンション等で自由を制限され、脱会を強要されたとして訴えた事件である。東京地裁・東京高裁で不法行為が認定され、最高裁平成27年9月29日決定で確定した。

(2)エホバの証人女性信者監禁事件(大阪高裁)

エホバの証人の女性信者が、夫と牧師の関与により事前に改造された山荘に監禁され棄教を迫られた事件。平成14年8月7日に大阪高裁が身体および精神の自由を侵害する不法行為であると認定し、判決が確定した。

(3)鳥取教会信者監禁事件(広島高裁松江支部)

旧統一教会の鳥取教会を約20人の集団が襲撃し、当時31歳の女性信者が拉致されて1年3か月間にわたり監禁、棄教強要された事件である。平成14年2月22日、広島高裁松江支部の判決で監禁、および棄教強要の違法性を認定した。

(4)大阪マンション監禁事件(大阪高裁)

当時28歳の旧統一教会の女性信者が大阪のマンションに2か月間監禁された。大阪高裁は平成16年7月22日、本人の意思に反する拘束と棄教強要を違法と認定した。

(5)夫婦監禁事件(広島高裁)

旧統一教会信者の夫婦(当時40歳代)が別々に拉致され、二人とも同じ大阪のマンションに監禁された。令和2年11月27日、広島高裁の判決で被害者夫婦に対する監禁、および棄教強要の違法性を認定した。

⑥ 国際社会から示された懸念

拉致監禁・強制棄教の問題については、国際社会からも、信教の自由や人権の観点から懸念が示されてきました。

国連の自由権規約委員会は2014年、日本における新宗教信者に対する拉致・強制監禁について懸念を表明し、日本政府に有効な措置を講ずるよう勧告しました。
国際人権NGO「国境なき人権」(Human Rights Without Frontiers)も、2011年12月31日付の報告書で、日本における棄教目的の拉致・拘束の問題を取り上げています。

また、米国務省の『国際宗教の自由報告書』でも、旧統一教会信者に対する拉致監禁・強制棄教問題は複数年にわたり取り上げられ、信仰の自由が脅かされていることへの懸念が示されてきました。
こうした国際的な指摘は、この問題が日本国内にとどまらない人権課題であることを示しています。

⑦ おわりに

拉致監禁・強制棄教の問題は、単なる過去の出来事ではありません。

現在も多くの当事者が、その体験や影響を抱えながら生活しています。また、高齢化や資料の散逸により、当時の実態を知る機会は年々失われつつあります。
当会は、こうした歴史や体験を記録として保存し、被害を受けた人々や関係者が安心してつながることのできる場をつくり、社会に対して事実を伝えていくことを目的として活動しています。

私たちは、宗教の違いや立場の違いを超えて、一人ひとりの人権と信教の自由が尊重される社会を目指しています。
この問題に関心を持たれた方は、ぜひ当会の活動や資料をご覧いただき、拉致監禁・強制棄教の実態を知る一歩としていただければ幸いです。