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世界から指弾−日本の人権(5)米宗教の自由報告書が「拉致」明記/世界日報“拉致監禁”の連鎖
世界から指弾−日本の人権(5)
米宗教の自由報告書が「拉致」明記
米国務省発表の「宗教の自由年次報告書2010年版」の日本についての記述部分 |
米国国務省の民主主義・人権・労働問題担当局が世界に向けて発信する「宗教の自由年次報告書2010年版」が、昨年11月17日に公表された。
アルファベット順に各国の宗教の自由についての状況の記載が続く中で、日本の実情については「信仰の自由について概ね良好な状況にある」とした上で、冒頭の報告を付している。
第2節「政府による信仰の自由の尊重」では、その「信仰の自由」に抵触する具体的事例を例示。「強制改宗」の項で「統一教会からは、家族および職業的強制改宗屋(ディプログラマー)から、同教会から脱会するよう圧力をかけられた信者が数人いたと報告があった」と明記している。
さらに、第3節「信仰の自由の社会的尊重の現状」では、新興宗教に及んだ宗教迫害について記述。「ここ数年間、職業的強制改宗屋が家族と結びついて統一教会、エホバの証人、その他少数派宗教の信徒たちを拉致監禁している。この10年間で被害者の数は激減しているものの、2010年の時点で拉致監禁されている統一教会信徒たちは5人に及ぶと報告があった」というのである。
今回の10年版では、9年版に続いて12年5カ月にわたって拉致監禁された後藤徹さんの被害事件についても報告されている。「家族と専門のディプログラマーにより、自らの意思に反して12年以上にわたり拘束されていたとする統一教会の成人会員は、2008年に解放された。検察は、証拠不十分で本件を不起訴とした。本年の報告期間終了時点で、本件について不服申し立てが行われていた。」(同)と、個別の拉致監禁事件を取り上げた上で、異例と言っていいほど詳しく説明している。
外交方針に自由と民主主義の推進を掲げる米国は、各国の宗教・人権迫害についてはひときわ敏感な反応を示す。「政府が宗教弾圧に関与しているか、弾圧を見逃している」国を「宗教弾圧の懸念のある国」に指定し、経済制裁や外交関係の制限などの手段をとることを記した「国際宗教自由法」を1998年に制定。各国との外交関係を決める資料の一つとして、同法に基づき、国務省が毎年リポートしているのがこの報告書だ。
3年前、当時のブッシュ大統領が、ホワイトハウスで同法施行10周年の記念演説を行った。
その中で、いわゆる「中国における信教の自由の問題」について、「米国は中国で信教の自由を求めている人々を忘れていない」とスピーチしたことは記憶に新しい。
この報告書をまとめるため、各国の米大使館は、その国の宗教事情に十分な注意を払うことを求められている。
各国に駐在する米大使館担当者は、その国の宗教事情に精通しなければならず、市中の関係者や国会議員などにインタビューしたり、関連する資料を探るのに忙しい。
宗教の自由報告書は、こうした努力を重ねてまとめられた非常に綿密な報告書である。
(「宗教の自由」取材班)