統一教会の信者に対する、拉致監禁・強制改宗について、その根絶を求めます。有識者の声。国境なき人権報告書(棄教を目的とした拉致と拘束)のはじめに
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有識者の声


国境なき人権報告書

棄教を目的とした拉致と拘束

はじめに

アーロン・ローズ博士、ハンブルグ、ドイツ

この報告書は、日本人を対象にした棄教を目的にした拉致・監禁の実状と、そうした犯罪行為の加害者を捜査も起訴もしない警察や司法当局の実態についてまとめたものである。
拉致被害者に法の下の平等な保護を保障していないこと、そして加害者に何ら刑事責任を問わない状況は、日本国民が憲法で保障された権利および日本が国家として義務を負う国際的な人権規準に対する重大な違反に当たる。

日本の政治家や市民団体および世界の人権関係者は、この拉致問題を長い間、事実上放置してきた。
その結果、数千人近い人たちがむごい苦痛を受けた。
この報告書では、客観的かつ実証的な文書を提供し、同時に文化・法律的な背景を分析・解説して、事態打開の勧告を提供している。
日本と世界の政府関係者や市民団体が遅ればせながら、この犯罪行為に対処し終止符を打つよう期待するものである。

世界の人権状況を監視している人々は、世界でも有数の法治制度と高い文明・文化を持つ日本の社会で、重大な人権問題が発生しているとは想像できないに違いない。
日本は人権関係者の監視対象ではなかったはずだ。
いわゆる「問題国」の場合、当局は法の支配に関心がなく、国際規準など眼中にないが、日本はそういう国ではなかったはずだ。

弱小宗教団体に属する信者は、最も先進的な社会でも往々にして差別され偏見を持たれているので、その偏見の故に、彼らが受けている差別に関心が払われることは少なく、見識のある活動家でさえ問題を見逃してしまうほどである。
多くの人々は自分たちが支持しない信条や慣習をもつ教団について、その信者が直面している問題にはあまり関心が向かないものだ。
むしろ、その教団が非難されるような倫理・法律的な不祥事を引き合いに出して、大した問題ではないと言うのである。

言うまでもなく、どのような社会でも宗教団体は法に則って活動しなければならない。
法律を破れば、その団体は訴追され処罰されねばならない。
だが教団や信者が、憶測からくる非難や偏見の故に自由や保護を得られないことがあってはならない。
実際はどうかといえば、日本以外でも多くの新宗教や弱小教団が、信者への人権侵害に頭を悩ませている。
ひとつの理由は、既成教団が自らの「市場占有率」を確保するために、必要とあらば当局の肩入れを期待したくなるほど、彼らにとって新宗教が脅威だということである。
しかし、ある社会の道徳的成熟や、人権と民主主義の原則への忠実さは、弱小教団に対する寛容度によって試されるものだ。

拉致はおおむね、被害者自身の家族の手で実行される。
プライバシーを尊重せざるを得ないことと、家族の側も身内の恥を外に出したくないことから、その扱いが難しい家庭内暴力の一つだ。
この問題では、日本の当局者だけでなく市民団体も、その資質が試されていることになる。
日本の当局者が国際法の規定する個人の人権尊重に本気で取り組む気があれば、日本特有の「家」のしきたりなどを持ち出して人権侵害を正当化するような文化相対主義には逃げ込まないはずだ。

日本人の信者脱会を狙いとした拉致と、それが時に暴力を伴う実態を認識するに至ったのは、私が2010年に訪日した際、被害者たちに面会して問題の全体像をつかめたからである。
オランダの元国防大臣・外務副大臣のウィレム・フレデリック・ヴァン・エーケレン博士と一緒に、日本の国会議員10名と会談して、政府がこの問題をどう見ているかも確認することができた。
拉致被害の実態は数十年間、一般にも知られていたはずだ。
また日本は反省心が旺盛で恥の意識も強く、道義に反することを嫌う社会なのに、拉致問題に関しては義憤の声が上がらなかった。
政治家は総じて関与を嫌がり、問題を把握していた政治家も、現行制度上、警察がどこまで介入できるのか疑問視していた。
ジャーナリストは全般に関心がなく、国内の人権団体も問題視していないようだった。
拉致被害者とその家族はそれぞれの立場で、起きてしまったこと、起こしてしまったことに深く傷つき、その苦しみを誰にも分かってもらえず、当局も無策であることに苛立っていた。

拉致の実態を正確に記録する作業は、当該の宗教団体、とりわけ、拉致被害者の大半が属していた統一教会によってのみ進められていた。
しかし被害者たちは、彼ら自身が被った犯罪を立証する上で、十分に信頼できて権威のある情報源と見なされたことはなかった。

この問題を分析し、人権関連の文献として世に問うために、「国境なき人権」が選ばれたのは、他の独立系の人権団体よりも信教の自由に関する分野に強く、経験が豊かであり、客観的で科学的な仕事ができるとの公正な評価を得ていたからである。

2010年の来日中に面会した国会議員の一人は、拉致・監禁問題を打開するには「黒船が必要だ!」と発言した。
「黒船」とは1853年に来航したペリー提督率いる米国艦隊のことで、それが日本を開国させ近代化を促すきっかけになった。
(訳注:同議員は、同様の外圧がなければこの問題を進展させるのは難しいとの認識を示したのである)そうした発言を聞くと、日本独特の文化がいかに執拗であるか、あきらめにも似た感情に襲われる。
日本社会は、表向きハイテクと合理的な態度が行き渡っているが、その反面、伝統的な制度が柔軟に変容できず、世界から孤立した社会になってきたからだ。
しかし弱小教団の信徒拉致という事態から引き出すべき結論は、それとは別のものであってほしい。

他の多くの社会も似たような事態に直面して、それぞれの環境で個人の人権を守っていかなければならない国際的な義務と、伝統や家族構造に由来する半強迫的な期待感との間で、うまく調和できない課題を抱えている。
だから、必ずしも日本が特殊というわけではない。
むしろ国際社会を一致させるための人権規準に言及することによって、日本は指導力を発揮し、連帯をもたらすことができる。
この問題に解決の道筋を付けるに際し、日本政府は世界の人権関係者から建設的な支援を得られるだろう。
本報告書を提出するにあたり、拉致問題への認識が広まり、議論が進展することを期待したい。
日本国内および国際社会で、確実かつ効果的で機動的な対応が新たに取られることを望み、それを支援したい。
その上で拉致問題が終息することを切望している。



アーロン・ローズ氏:国際的人権活動家、大学講師、文筆家。 1993年から2007年まで国際ヘルシンキ人権連合(ウィーン)の常務理事。 2008年に数人の同志とイラン人権問題国際キャンペーンを立ち上げた。 ボストン大学と人文科学研究所(ウィーン)でも勤めたことがある。 リード大学で学んだ後、シカゴ大学で社会思想の博士号を取得する。

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    ルポライター米本和広氏が、拉致監禁によって引き起こされたPTSD被害の実態をレポート。

    ►第6章 掲載
  • 人さらいからの脱出

    世にも恐ろしい「人さらい事件」に関わった弁護士、牧師、マスコミ人らの非道な実態を実名で白日のもとにさらす。

    ►書籍紹介
  • 日本収容所列島

    いまなお続く統一教会信者への拉致監禁。小冊子やパンフレット、HP等で告知してきた内容をまとめました。

    ►書籍紹介

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