拉致監禁事件の根絶を政府に求む! 全国 拉致 監禁・強制改宗被害者の会

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世界学生新聞 号外 1993.5.15

山崎浩子さん改宗問題を考える
誰が2人を引き裂いたのか

「4300余名の苦しみ・・・」「宗教を超えて人権弾圧問題」

山崎浩子さんの統一教会脱会が世間を賑わせたが、どうも釈然としないことが多い。行方不明と後の態度の変わりよう、ら致・監禁は本当になかったのか、聞き慣れないマインド・コントロールとは何なのか。これらの"謎"についてもう一度検証していきたい。 三月六日から行方不明だった元新体操選手の山崎浩子さんが、四十六日後の四月二十一日、TBSでの記者会見で、宗教法人世界基督教統一神霊協会(統一教会)からの脱会を表明した。


この会見での山崎さんの言動は、行方不明になる前の言動と一八○度違っており、その変貌ぶりは多くの人々の驚きを呼んだこの行方不明の期間山崎さんに何が起こったのか。
会見で一応の区切りを付けたように見える"山崎失跡事件"であるが、この事件は「信教の自由」「思想及び良心の自由」などの.「基本的人権」、ならびに「テレビ・週刊誌等のマスコミの報道姿勢」の点において多くの問題と謎を残した。
山崎さんの失跡事件において、第一の"謎"は「ら致・監禁、強制改宗」か「自由意志、自由脱会」かということである。統一教会と山崎さんの夫である勅使河原秀行氏は、当初から「ら致・監禁、強制改宗」と主張、反統一教会の立場をとるTBSテレビ、週刊文春などのマスコミは、「ら致・監禁などではない」と繰り返した。山崎さんは会見で「マンションでは(姉やおじたちと)普通に生活していた」と語り、ら致・監禁を一応否定した。
しかし、週刊文春に掲載された山崎さんの手記には「『姉たちが”ら致・監禁”をするなんて……』。到底信じられないこのような思いだった。けれど、これは間違いなく、統一教会で何度も聞かされていた"ら致・監禁"であろうことは明らかだった」とある。さらに会見でも「改宗させるためのら致・監禁であると思い、怒りがわいた」と語っており、四月二十二日付毎日新聞のメディア欄で指摘されている通り、ら致・監禁の否定は「改宗後の意識」によるものなのである。

本当にら致・監禁ではなかったか?
客観的事実から見て監禁

このように、山崎さんが改宗後にどのように語ろうと、改宗されるまでは「ら致・監禁と思っていた」のであり、事実として、マンションの一室から外に出ておらず、外部との連絡もなかったことからして、監禁であったことは自明である。そして、そのように監禁下で行われた"脱会説得"は、憲法二十条に保障された「信教の目由」を著しく侵害す.るもので、決して許される行為ではない。統一教会反対派のスポークスマン・有田芳生氏などは、テレビで再三、「統一教会は反社会的団体。だから外界と遮断しての脱会説得は許される」と、一方的決めつけに基づいて"外界と遮断しての脱会説得"…言葉を代えれば、監禁下での棄教強要を正当化しようとしているが、実に問題多き態度である。また、たとえ両親・親族であったとしても成人した個人を長期闘外界と隔離し、夫である勅使河原秀行さんや会社、さらには二番目の姉である和子さんが連絡しようとしても、それを許さなかったことに、はっきりと行き過ぎが見える。
こうした行為を違法とする法的判断は既に下されている。平成三年一月三十日、京都地裁で書い渡された判決においては、統一教会員が監禁されている教会員を救い出す際、窓を壊した件は行き過ぎがあったとしつつも、監禁されていた教会員は成人であり、「たとえ親族であったとしても拘束及び棄教要求は違法である」との判断を下しているのである。これまで統一教会では親子関係を重視してきたため、両親・親族の陰に隠れてら致・監禁をそそのかし、実質的に強制改宗、棄教強要を行っている牧師や改宗屋などは法的に断罪されることなく野放しになってきた。この現状が解決されない限り、ら致・監禁、強制改宗による人権侵害はあとを断たないであろう。

統一原理はすべて間違い?
教えの根幹に対する批判なし

第二の"謎"は、山埼さんが脱会の理由とした「統一原理がすべて間違いだと分かった」という根拠が不明瞭なことである。統一教会に入信することも脱会することも当然自由であるが、「統一原理が間違い」というのは、具体的にどういう点なのかが釈然どしない。「手記」や「記者会見」から脱会に至る様子を見でいくと、まず統一教会の幹部の脅迫のテープ(本当に教会幹部のものか疑わしいが)を聞かされ、暴力事件の資料(公式な資料か疑わしい)を見せられて教会不信を植え付けられ、その後統一原理の中の聖書の引用句の閻違いを指摘され統一原理に対する疑いを持たされ、韓国の反統一教会派の資料に基づく根拠もあいまいなスキャンダルを徹底的に聞かされ精神的混沌に陥らされ、さらには教会の出版物で闘違った写頁を使ったことなどを見せちれてさらに不信を深めていくという構図が見える。そして「あまりにもいいかげんな聖書の引用、文鮮明師の美談も、統一原理のルーツも、真っ赤なウソだった」と結論づけるのである。
謎として指摘したいのは、統一原理の教えの三本柱である「創造原理」「堕落論」「復帰原理」に対する総合的批判が何もなされていないことであり、教えの根幹部分は何の傷もついていないのである。これからして、山崎さんは枝葉末節な批判に目を曇らされ、十把一からげにして教えの本体まで棄てるに至ったのではなかろうか。そうだとすれば、実に残念なことである。
第三の"謎"は、山崎さんが会見や手記の中で主強していた「マインド・コントロール」論である、手記の中で山崎さんは「さまざまな資料をもとに、自分自身の勧誘のされ方、学ぶ方法、その後の生活、それらを照らし含わせて、それこそまさに、マインド・コントロールされていたのだということが分かった」と書いでいる。彼女が統一教会に入信したのもこのマインド・コントロールの結果であり、「マインド・コントロールされていた私の中でどこまでが私の本心からの感情だったか分からない」と、勅便河原秀行氏との結婚生活も夢のごときものであったと白紙撤回してしまった。

マインド・コントロールとは何か?
曖昧で客観性のない用語

しかし、このコマインド・コントロール」ほど正体の知れない言葉はない。これは心理学の用語であり、詳しくは心理学において論じられるべきことであるが、アメリカの心理学協会では、「客観性を持たない用語」として排除されているという。その理由は、「マインド・コントロール」と人の意見や行動に影響を与える他の方法と区別がつかないことだという。マインド・コントロトルを認めると、すべての宗教をはじめ、学校教育にしても、思想機関にしても、多かれ少なかれ、それを行っているということになる。
これほど曖昧な「マインド・コントロール」という言葉で、特定団体の批判をすること自体、実にナンセンスであるが、仮にそれが許されとすれば極めて危険なことになる。なぜなら、「あなたはマインド・コントロールされているから、矯正されなければならない」として、自分の気に入らない団体の思想を持つ人に対して、強制的にその思想を変える・・・個人の内面に干渉する・・・ことを正当化してしまうからである。
さらに、今回の事件を報道したマスコミの異常性を考えてみたい。特に山崎さんの脱会会見を演出したTBSテレビ、週刊文春の姿勢は一貫して異常であった。山崎さんが連絡を絶って日が過ぎていく中で、「人権」の観点からその行方不明の異常性を報道し、その早急な解決を追い求めることこそ良識あるマスコミの取るべぎ姿勢であろう。しかし、この両メ.ディアは山崎さんの行方不明の間、「統一教会=反社会的団体=悪」という構図でキャンペーンをはり続け、山崎さんの監禁状態を支援していた。さらに、週刊文春編集長の記者会見にも見られるように、公正な第三者というよりは、代弁者ないしは当事者のような立場でさえあったのである。
こうしたマスコミの姿勢を産経新聞の『斜断機』では「おかしいのは、彼らマスコミが、統一教会を一方的に悪のイメージで彩り、自分たちをその悪から救い出そうとしている正義漢かなんぞのように見せようとする。その自信たっぷりの報道姿勢である」(五月五日付)と指摘している。また四月二五日付読売新聞の「メディァ時評」で「広告批評」編集長の島森路子氏は「会見後、記者席から一斉に拍手がわきおこったという話もちよっとこわい。…メディアがこぞって"正しい"生き方を強要し内面に干渉しているように感じ られるところがこわい」と、今回の事件におけるマスコミの報道姿勢に問題を提起しているのである

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